人口と経済成長の限界

今さらだけど、資本主義とは何なのか?それは常に経済成長しないといけない社会。農業、漁業、建設業、製造業、サービス業と並んでなぜか金融業界というものがあってこれは投資、回収=経済成長しなければ成立しない。でもそんなものがいつまでも続くわけがない。これはマルクスなんて読まなくても小学生高学年くらいなら理解できる。

さてその経済成長、国民総生産のUpだけど、

  • 1人辺りの生産性が増える
  • 1人辺りの消費が増え
  • 人口が増える
  • 未開の土地や資源を開発する

色んな要素があってどれも限界がある。今までこのブログでは生産性と消費にずっと注目して語ってきたように思うのだけど、実は経済に1番大きな影響を与えるのは人口のようなのだ。
さて最近売れてるらしいこの本。
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く 藻谷 浩介:一般書 | KADOKAWA
内容を自分に興味のある所だけつまみ出すと・・
「(生産)人口が減少する中、1人あたりの生産性を上げて、GDPを上げようというのは愚の骨頂である。それはむしろGDPの減少を招く。日本の現役世代の人口は95〜97年ぐらいから減り始めた。その頃から人々の生活が貧しくなり始めてる。」
私は経済の専門家ではないのではないので、経済学的な批判はできないが、「経済は経済成長なくして成り立たない」とか「消費は若者が金を持たないと伸びない」などの意見には辟易する。ただ人口とGDPの関係や生産性の向上がGDPの減少を招くなどの視点は興味深く、共感は出来ないけど、一見の価値のある本といった感じ。中国バブルはいつ弾けるか?という議論があるが、この本の通りなら中国の現役世代減少を迎える20年後ということになる。

さてもう一冊読んだ人口関連の本に興味深い記述が・・
「人口密度が低く、多くの食料を必要としなければ、簡単な道具を用いるだけの粗放的な農業で充分事足りる。ところが人口が増加してそれまでの農法では必要な食料を獲得できない。そこで、より有効に土地を利用する必要が生まれる。経済学者ボズラップはこの考えを農業以外の生産技術にも敷衍して、人口密度の上昇が生産技術の高度化を導くと結論づけた。彼女の技術発展論の背景には『人は困難に直面しなければ変わらない』という哲学がある。いままでのやりかたで社会が維持できないとわかって初めて、人は必死で工夫し新しい技術を発明する。新技術はやがて別の国や地域に普及する。ただしそこでも必要に迫られてだ。新しい技術はしばしばより多くの労働力、時間、資金を必要とし、慣れたやりかたを変えるのに苦痛も感じるだろう。新しい技術が受け入れられるのには大きなニーズがなければいけない。」『2100年、人口3分の1の日本』 鬼頭 宏(歴史人口学者)
そう考えると人口減少の時代を今までどおりの経済成長を前提とした資本主義経済では乗り切れない。必要に迫られた日本人(日本人だけじゃないけど・・)は新しい経済システムを発明することを迫られている・・ということか。

人口と言えばやっぱりこの本は面白かったので最後に載せておこう。
筑摩書房 移行期的混乱 ─経済成長神話の終わり / 平川 克美 著