ファスト風土についての雑感

『ここは退屈迎えに来て』ーーファスト風土の“退屈”から抜け出すには - チェコ好きの日記
ファスト風土には「趣味の奥行き」が無いんですよ。 - シロクマの屑籠

ファスト風土が話題になったので、自分も地方(群馬)に1年間住んだことのある都会の人間としてファスト風土について考えてみた。

群馬に住んでたのはもう数年前のことだけど、都会では、駅前、駅中にあるスタバやユニクロドンキホーテ等を車に乗って買いに行き、それが生活基盤になってる。駅前商店街はシャッターが降りてて閑散としてる。とにかく第一印象として寂しい、虚しいという気がした。

その寂しい、虚しいの感覚を今改めて考えると、地方ではまず人口(人口密度)が少ない。そして基本移動は車である。それは承認欲求を満たそうと舞台に上がった時、圧倒的に観客が少ないってことなのだ。例えば、お洒落なファッションをしてスタバにコーヒーを飲みに行く。東京なら駅前の人ごみも電車の中も人が半端ない、地方ならオシャレをしても車に乗れば外から見られないし・・家から車でスタバに行って帰っての間に自分を見てくれる人の数は都会の10分の一にも満たないかもしれない。

でも群馬の若者たちは一生懸命、承認欲求を満たそうとしてるようなのだ。奇抜なゴスロリファッションとか、高崎駅前のストリートミュージシャンドンキホーテにいるギャルとか・・でも原宿、渋谷で見るそれほど決まってない。やっぱり観客の少ない舞台の役者は下手なのだ・・って思わざるを得ない。

それと、何十件も食べ歩いたわけじゃないから・・恐縮だが、東京に比べラーメンが不味くそばがうまいと感じた。ラーメンにはスープの出汁の取り方から味噌、醤油、塩、麺に至るまで何百通りにも個性の出し方がある。逆にそばは麺つゆにも麺にも個性を出す余地なんてない。群馬のラーメンは東京で流行りのとんこつとかつけ麺等、模倣しながら個性を前面に出そうとするのだが、味はどれもイマイチ・・逆にそばを食うと「そばってこんなにうまかったっけ」っていうほど美味い。

消費のサイクルで言うと、1、まず1番メジャーな物から入る。2、周りも皆メジャーな物を消費しだす。3、周りとは違う独自の個性的なものが欲しくなる。4、個性を追求しすぎて飽和する。5消費に飽きる。

シロクマ先生も指摘してるけど、地方のファスト風土では、ファッションでも食でも2→3の段階で引き出しが圧倒的に少ない。独自の個性的な消費はやっぱり個人営業の店でないとないから地方で探すのが難しい。それとやっぱり観客が少なく、見ることも見られることも少ない環境では承認欲求エネルギーが少なく2、3にたどり着く前に息切れしてしまう感じがする。
ただどっちにしろ流行発信地?の東京でも消費は飽きられている。もうどんな過激なファッションも新しくない。渋谷からギャルが消えるくらいなのだから・・そういう変化が地方のファスト風土にどう影響を与えるのか興味深い。

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

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